実施日:1979/10/03-06
報告者:半田
報告日:1979/10/31(二ぺの声/S54-13)
コースタイム
10/4 沓形08:52-七合目10:17ー利尻山13:00ー鴛泊16:20








10/3 利尻島到着
急行利尻は朝もやのサロベツを一路稚内へ走って行く.豊富・兜沼,懐かしい風景が目の前にひろがる.海の彼方にはほの明るさの中,うっすらと利尻富士が望める.抜海の近くまで走ると太陽は高度をまし洋上にぽっかりと利尻が浮き上がる.このあたりがサロベツの中でも一番好きなところだ.
稚内駅に着くとぷーんと潮の香が鼻をつく.稚内港から利尻島鴛泊(おしどまり)までは約2時間の船旅.島に近づくにつれて利尻山(利尻岳ではない)が眼前にせまり威圧感すら与える.ついには標準レンズの域を出てしまう.天気も上々,波もなく快適な航行となる.しばしまぶたが重くなる.10時ごろ島に到着.腹ごしらえをゆっくり島内一周.海岸づたいに道路が一周しておりバスが一日12便.1周2時間弱.料金千数百円.
利尻山はみる位置によって様々な山容を呈する.特に南の鬼脇(おにわき)附近からの景観は素晴らしい(Fig. 1, 2参照).利尻山にはクライマー向きのバリエーションルートがいくつか開拓されており岩登りの人にも人気があるそうです.バスが2時間に1本しかないので時間つぶしに昼寝.風もなく,日もさんさん.本当に眠くなる.昨日列車の中でつけた天気図では低気圧が接近中.山頂の雲もなんとなく悪天のきざし(Fig.3).
10/4 利尻山へ(沓形~山頂~鴛泊)
翌日,目覚めると案の定,雨の音.「くそ!」と思いふて寝.どうも今年は雨につきまとわれている.というより僕自身が雨男なのかもしれない.じっとしているのも癪だからやはり登ることにする.まずは儀式.登山靴を海面につける8:52.これから1718mの登りだ.写真でお判りの通り利尻はすその広い山だ.5合目まできてもまだ標高400mたらず.ここまで約2ピッチ.道はよく整備されており,指導標もしっかりしている(Fig. 4).
7号目には水場・避難小屋がある.10:17着.空はうっとおしい鉛色.あたりの紅葉も輝きを失い沈んでいる.小屋からしばらく登るとコブ(cont.906)が見え,左手にトラバースして稜線に出る.本当だったら,眼下に青い海原が広がるはず.考えてもいまいましい.稜線に出ると次第に道は急峻となり8合目から9合目にかけてはまさに鼻が突くほどの急登.雨のため足もとが滑りやすく難渋する.
9合目からしばらく行くとトラバース道となり(このあたり危険個所).鴛泊からの登山道と合流する.ここから約15分で火山岩のザレ場を急登し利尻山頂13:00着.頂上にmは三角点と祠があるだけ.まったくガスの中.他に登山者はいなく僕だけだ.仕方なくセルフタイマーで証拠写真.劔岳に登った時を思い出す(剱岳には2回登頂したが2回ともガスにたたられた).強がりでもいいから笑顔を見せようと努力するが,どうにも顔がひきつってうまくない.
結局20分ねばって下山.鴛泊に向かう.鴛泊コースは8合目にはブロック造りの山小屋がある(cont.1200附近).記録によればこの8合目から鴛泊までわずか40分そこそこでかけおりた者もいるとか.ちなみに頂上~鴛泊は所要3時間です.
全体的に単調な山なので各号目の指導標が非常な助けとなる.特に鴛泊コースの方には標高さえ付記されており現在地を容易に知ることができる.鴛泊着16:20.利尻は頂上附近は草もはえない火山岩のザレ場.その下はハイ松帯,ダケカンバ,トド松原生林と続いている.特にトド松原生林は海岸線からちょっと山ろくに足をふみこむだけで見られ,北海道ならではの自然である.
10/6 礼文島にて
旅の後半は礼文島にわたりここから利尻を楽しむ.花の島礼文島も今の時期ではクマザサがおい繁っているだけののっぺらぼう.小高い丘の上から利尻がぽっかりと浮かぶ.朝晩は近くにみえ,日中はかすんでいるため遠くにみえる.朝の利尻をねらうため5時起床.外は鉛色の空.低い重そうな空模様.利尻も夜明け前の薄暗い中でぼんやりとシルエットを示す.ご来光は雲の中.しかたなく港をぶらぶら.人影はない.そのうちに利尻後方にあった雲がどんどん晴れて空が拡がる.この瞬間を待っていた.心ゆくまでシャッタを切る.へたな鉄砲のなんとか(Fig.6).
おみやげに土地のおじいさんの自筆・自家製の礼文凧を買いました.大きな音を立ててぐんぐん上がるそうです.憧れの利尻・礼文.閑静な北の島旅を満喫することができました.機会があれば是非,春の残雪期に来たいものです.どうもそれは夢になりそうですが,僕自身の原風景として大切にしておきたいと思っています.