実施日 1980年6月22日
参加者 半田
報告日 1980/08/12(二ぺの声/vol.5-No.4)
行程
愛宕道12:22—余野14:15—西町14:40—東町15:15—薬師峠16:43—岩屋橋17:20



梅雨の中休み,わずかばかりの陽ざしに誘われて静寂の里大森を訪ねた.周山街道は愛宕道で下車.冷房のきいたバスから降りるといかにも陽ざしが強く,じっと汗がにじむ.大森の町へは2つの峠,余野峠,伏見坂を越えることになる.
余野峠までは谷沿いの道.半時間も歩くと滝又ノ滝に着く.北山には珍しい割合に大きな滝だ.左手を高巻くと道はなだらかになり,2,3の小分岐をすぎると余野峠への分岐となる.このコースは典型的なハイキングコースらしく要所要所に導標がある.余野峠は明るい峠である.道の向こうには青空が拡がり眼下には余野の町が拡がる.それにひきかえ次の伏見坂はまったく陰気な峠.深い樹林におおわれ,下り坂はじめじめしている.
大森の里は3つの町,西町,中町,東町からなっている.伏見坂を下ったところが西町,左へ行けば茶呑峠,山国,右は中町,小野へ出る道となる.今日は何年かぶりで捕虫ネットをもってきた.小さな女の子に「何,とりにきたの」と聞かれすかさず「ちょうちょ」と答える.何とも言えない珍妙な会話がとりかわされる.この大森という町にはいわゆる「ひなにはまれなる」端麗な女の人がいるとか(文献(1) 参照).しかるに後にも先にも他にまれなる女の人には出逢うことはなかったから,あああの女の子がそうかと思ったりで,まあ一人の山歩きは考えることが多く楽しいものです.
中町から橋を越え東町に至る.選挙投票所となっている分校の前を過ぎると谷はどんどんつまり,薬師峠への分岐にくる.薬師峠への登路は右に左に脇道があり,まったくわけがわからん.それに2.5万の地図が違っている(地図上では最初から尾根道だが,実際は谷沿いの道となっている).
急ぐ必要もないが無暗に歩き廻るのはバカらしいので一度下って民家で道をたずねる.峠に詳しいというおじいさんを訪ね道をきく.言葉はききとりにくいが,苗木の手入れの手をとめて,ていねいに教えてくれた.別れぎわに「『北山の峠』という本を知っとるか」とくる.知っていると言うと「あの中巻には大森の町のことが詳しく書いてある」とのこと.こんど下巻が刊行されて完結すればお祝いの会をやるんだとか,本当に楽しそうに話してくれた.ちなみにおじいさんは70歳くらいで,名前はサワダコウゾウさんです.
さて道に戻って林道終点から左の谷道をたどり,谷が少し広くなったところで正面に大きな岩がありその上に大きなヒノキが一本ポツンと立っている.これを目標に登り,左手にトラバースするとあとは樹林の中の登り道となり,薄暗い薬師峠に到着する.何の木かは知らないが,大きな枯れ木立が印象的だ.そろそろ日がくれ始める.岩屋不動を過ぎ,舗装道路に出ると岩屋橋までは一投足.ここちよい疲労感がおそいはじめる.
北山の峠,今回は3つ越えました.(余野峠,伏見坂,薬師峠)
参考文献(1) 金子昌業編『京都周辺の山々』p.137, 創元社(昭和53-04).